初心者チュートリアルに必要なのは「前提」と「質問」という話

どんな趣味の世界も、時間とともに自然と年を取っていきます。若い頃には月に20回もセッションをこなしていた人たちが、徐々に活動を減らしたり、別の趣味に移ったりしていくものです。

そのままでは規模が縮小し、いわゆる「限界集落」状態になってしまいます。そのため、初心者の勧誘や牽引はどんなコミュニティでも必須といえるでしょう。だからもっとお前らシノビガミをやるんだよ!

こんにちは、シノビガミ以外は永遠の初心者のふれのです。今回は私が自負するプレゼンの得意分野、シノビガミのインストラクション手法をご紹介します。

「触らせてナンボ」がトレンド

現代のゲームチュートリアルに多いのは、実際に操作させながら要素を学ばせる方法です。わざわざ特別なチュートリアルモードを用意せず、実際のプレイの中で徐々に操作を増やしていくスタイルが主流になっています。気がつけば教えられることがなくなり、いつの間にか独り立ちしているという感覚を味わえます。

理由は簡単。現在人は長々としたチュートリアルテキストを読んでくれません。「いいから触らせろ、操作させろ」というのが現代のゲームチュートリアルのトレンドなのです。

なぜ実践型が効果的なのか
・プレイヤーは長い説明文を読みたがらない
・実際に操作することで体感的に理解できる
・徐々に学びながら自然に上達していく感覚が得られる

このアプローチはTRPGでも同様です。丁寧にチュートリアルを行うと、キャラクター作成と世界観の説明、ルールの説明だけで一日丸々使えてしまいます。特にシノビガミ、マギカロギア、ダブルクロスのようなデータ重視のシステムでは、キャラメイクからして結構ハードル高いです。

しかも、ここで問題となるのは「キャラクターを作っている時点では、まだゲームを遊んだことがない」という状況です。どのような構成にすべきか、どのようなデータを持たせるか、流派や経歴、シンドロームをどう決めるか、いくら口頭で説明を聞いても具体的にイメージできません。

そこで私が提案するのは、「いっそ慣れるまでデータはサンプルで良い」というアプローチです。流派や職業はイメージだけで決めてしまいましょう。例えば「知的な科学者っぽいRPがしたい」なら、斜歯忍軍のような漠然としたイメージだけで十分です。

データは公式が用意しているサンプルキャラをそのまま使うか、GMが事前に用意しておくとよいでしょう。中に書いてあるテキストや効果がまったく理解できなくても大丈夫です。私が初心者の方にチュートリアルを行う際は、流派とキャラクター性だけを決めさせ、

その他の要素は除外するようにしています。この時点ではシノビガミのルールなど分かるはずがないので、効果を読まなくても問題ないのです。まずは遊ばせることを最優先にします。セッション日までに余計なことを考える必要はなし。

こうして迎えたセッション日

さて、設定だけ決めたキャラクターが揃い、セッション当日となりました。ここでようやくチュートリアルに入っていくわけですが、意識すべきポイントは3つです。

  1. その場で必要なチュートリアルのみ行う
  2. 大前提を最初に話す
  3. 相手に質問させる

「その場で必要なチュートリアルのみ行う」というのは、多くの方が実践していると思います。

・判定が必要になったときに初めて判定方法を説明する
・戦闘シーンに入ってから戦闘ルールを説明する

一度に全てを説明すると記憶できないため、段階的に教えていくことが重要です。「何を説明するか」と同時に「何を説明しないか」も意識しましょう。

しかし、この手法にもう一手間加えることで、聞き手の理解はさらに進みます。それが「大前提を先に話す」ということです。例えばシノビガミの場合、導入シーンが終わって自由行動ができるところで「ではメインフェイズにできることを説明します。自分の手番になったら情報判定か感情判定か…」のような説明をすることがあります。

ここに一工夫加えましょう。この説明をする前に知っておくべき大前提を見つけ出します。この場合だと、シーン制(各キャラ交代、自分の行動数が決まっている)であることや、サイクル進行(3サイクルで終わる)などの説明を最初に大前提として伝えると、その後の理解が格段に速くなります。

シノビガミの世界観を説明する際も、個々の流派の説明をする前に「現代日本での異能バトルものです」という前提知識があるだけで、その後の理解度は大きく変わります。

戦闘シーンに入る前に、「プロットと行動手番を繰り返して、先に相手の生命力を0にした方が勝ち」という説明があれば、その後のプロットと諸々の説明が理解しやすくなります。

そして最後のステップが「相手に質問させる」です。説明の際に意図的に一部の詳細を省き、説明が一段落したところで質問を受け付けます。これは「質問を考える」行為を相手にさせるためのテクニックです。

相手が質問を考えるためには、これまでの説明を理解していなければなりません。ここで質問というプロセスを踏ませ、それに回答することで、最初からその内容について説明するよりも格段に理解度は高まります。自分の質問に対してパーソナルな回答をもらった感覚が生まれ、一方通行の解説ではなく双方向のコミュニケーションになるわけですね。

もちろん「質問はありません」と言われる場合もあるので、そのときは省略した箇所をどこかで補足する必要があります。ゲームを進めていく中で、関連する状況が来たらそのタイミングで改めて説明すれば良いのです。

これを繰り返して1回のセッションを終わると、遊びながら知識を蓄えられます。もちろん1回のセッションではまだ分からないことも多く残るでしょう。使われなかったルールも多々あると思います。

そういったルールは次に持ち越しです。しばらく遊びを繰り返していくと、ようやく「自分でキャラクターを作ってみたい、データを組んでみたい」という欲求が生まれます。そこで初めて自分でデータを作ってキャラメイクに挑戦しましょう。

個人的なデータゲーで自分でキャラを作るのにオススメの回数は3〜4回目からくらいです。それまではサンプルでいいですよ。

GMが初心者なら対立型、PLが初心者なら協力型

これはチュートリアルの手法ではなく、お勧めの考え方になりますが、初心者はGMの場合は対立型、プレイヤーの場合は協力型のシナリオをやるとよいでしょう。

シノビガミのGMに慣れていない初心者の方は、対立型のGMを担当し、経験者(信頼のある方が前提)をプレイヤーに置くと安心して遊べます。

対立型シナリオの特徴
・PC同士が対立する設定
・戦う理由や動機などをPCたちが演出して積極的に物語を作っていく
・GMは舞台装置としての役割が中心になる

対立型では、PC間が戦いの火ぶたを切り、プレイヤー自身が積極的に物語を作ります。そのため、GMが特に何もしなくても物語がある程度軌道に乗ってくれるため、初心者の方が困りにくいのです。もちろん、何らかの処理を行うことはあるでしょうが、経験者が居れば相談しながら進められます。

GMとしても様々な人の構成を見て、戦っている様子を観察し、多くのことを学べるでしょう。私も初心者の頃はGMとしてシナリオを回し、プレイヤーの方々に多くのことを教えてもらいました。

しかし、初心者プレイヤーに対立型はお勧めできません。なぜなら、ルールや世界観の理解だけで精一杯の中、「勝つためにはどうすれば良いか」というゲームをクリアするための攻略要素も考えなければならないからです。

さらには物語の深みが自分自身のロールプレイに強く依存します。うまくロールプレイできないと、戦う相手も共闘する味方も、何とも言えない白けた空気になりかねません。もちろん、シンプルにPvPが苦手、怖いという考えもあるでしょうし、初心者に対立型をお勧めできる要素はありません。断言します。対立はやるな!

一方、協力型は初心者プレイヤーにはうってつけです。

協力型シナリオの特徴
「黒幕を見つける」「ボスを倒す」など分かりやすい目標がある
シナリオ側で守るべきNPCや敵役NPCが用意されている
ロールプレイが苦手でも、ドラマチックな展開を観客として楽しめる
ルール理解だけに集中できる

黒幕を見つける、ボスを倒すという分かりやすい目的だけを見ればよいのです。ロールプレイがうまくできなくても、シナリオ側で守るべきヒロインや倒すべき敵役が登場するので、ドラマチックな展開を観客視点で楽しむことができます。自分のキャラクターが積極的に物語を作らなくてもよいのです。

あとはルールの理解だけに専念できます。受動的でも十分に物語を楽しめるのが協力型の良さです。

反面、初心者GMが協力型を回すのは少しハードルが高くなる可能性があります。なぜなら、ボスキャラを操作するのはGMだからです。敵が複数いれば複数のキャラクターを操作することになります。データの処理が多くなり初心者の方には負担となるでしょう。

そして敵役としてのボスキャラのロールプレイを担当するのもGMです。守るべきヒロインがいるならそのロールプレイもGM担当です。シナリオの展開、魅力的なキャラクターのロールプレイを通じて、セッションは熱く盛り上がります。

つまりGM次第で物語の没入感が大きく変わるのです。ただでさえルールの理解が曖昧な初心者GMの方に、それ以外の要素でいっぱいいっぱいになってしまうのは望ましくありません。

まとめ

ここでご紹介した手法は、TRPGのチュートリアルだけでなく、あらゆるプレゼンや説明で活用できます。

  1. 大前提を伝える
  2. 大まかな内容を説明する
  3. 必要な要素のみに絞った詳細を伝える
  4. 質問を待つ

この流れで説明することで、相手の理解度は格段に上がります。とにかく重要なのは、説明の内容を「大前提」「今話すこと」「質問待ち」に分解することです。これらのポイントを意識して、初心者にも分かりやすい説明を心がけてみてくださいね。

さて、シノビガミ初心者の方はいないかな〜回すよ〜ぜろゆめ〜

TRPGの遊びの本質は「相手に合わせる」

早速ひと記事書いてみました。私と作業通話している方などは散々聞いたことのある話だと思います。
どうも、話が長くなってきた老人TRPGプレイヤーふれのです。

今回は、私が持論として持っているTRPGを遊ぶうえで心がけたいもの、気をつけたいもの、その根幹にある気持ちを記事にしたいと思います。当たり前のことしか書いてはいませんが、改めて見てみると何かの気づきになるかもしれませんので。

既にタイトルで答えは出ている

もうタイトルが結論であり、真理であり、これ以上の話は出てこないので、ここで記事を見るのを終わっても良いのですが、さすがに味気ないので解説していきます。

毎日SNSで繰り広げられる論争、シナリオの作りについてや遊び方について、こんな酷いことがあったよーという嘆きに、それへの共感や反論。
そう、誰が呼んだか「TRPG学級会」というやつは今日もどこかで繰り広げられ、いろんな人の参考になったりコンテンツとして面白おかしく消化されたり、多感な人がストレスの要因にしたりするのでしょう。

しかし、それらに対する答えは実は、ほとんどこれで片付いてしまうんです。それがTRPGの本質は「相手に合わせる遊び」だよという言葉。これこそが答えであり、この答えに辿り着けていない人は、TRPGを遊ばない方がいいかもしれません。

ほら、TRPGを遊ぶことを何といいますか? 「セッション」ですよね。お互いの音色や演奏に合わせて一つの音楽を奏でるようにして、ようやく一つのセッションが成立します。
TRPGも同じです。キャラクターの個性をうまく調和させながら、一つの物語という名の楽曲を仕上げないといけません。

一人だけが目立ちたがったり、自分の思い通りに進めようとしたりすると、セッションは成り立ちません。独りよがりなギターソロでは素晴らしいバンド演奏にはならないのと同じです。TRPGでは、自分の個性を出しつつも、他のプレイヤーやGMと調和できる「温度感」が大切なのです。

もし相手に合わせることができない、または合わせることで自分が極端に不幸になってしまうなら、それは単に相性が合わないだけかもしれません。そういう場合は、無理に同卓する必要はありません。これが大前提です。

妄想と創造のキャッチボール

TRPGはお互いに同じルールを、世界観を、そして存在しないキャラクターやシチュエーションを共有して一緒に物語を作っていくという遊びです。これは一般人に説明してもなかなか理解してもらえない、意味が分からないことをやっているんですよね。

TRPGってなあにって一般人に聞かれた時に私は「超本格的おままごと」としか返せませんし、それ以上語っても理解されることは難しいでしょう。

そんな面倒なことも実は紐解いていくと結局は、楽しい体験を「誰かと共有する」という遊びであるという結論に辿り着くんです。一人で遊ぶならコンシューマーゲームを遊べばいいですからね。TRPGの魅力は人と人とのコミュニケーションです。マジでこれ。

PC同士の会話、GMの投げ掛けに対する回答、その場で紡がれる即興の物語に一喜一憂し、感情を動かされる。これらはすべて誰かとのコミュニケーションによってのみ成立し、その他の要素はコミュニケーションを促進するためのツールに過ぎないのです。これがTRPGを遊ぶユーザーが持つべき大前提としてあります。

実はTRPGにはかなり高度なコミュニケーション能力が求められます。

  • 実際には目の前に存在しないキャラクターや場面を想像する
  • 実際には体験していないシチュエーションを頭の中で作り上げる
  • 他の参加者が作り上げた想像の世界を理解する
  • そこに自分の想像を重ねていく

正直、めちゃくちゃ難しいです。相手の話す内容を理解するヒアリング力、自身の妄想を分かりやすく伝達する伝達術、その双方が試されます。

これ、逆に言えばコミュニケーション力が足りない人のTRPGは、その妄想と想像のキャッチボールが上手くいかないってことなんです。これの具体的な例をあげていきましょう。

うちの子ジャイアンリサイタル

TRPGでは、自分のキャラクターに様々な設定を付け、愛着を持つことはとても自然なことです。しかし、果たしてそれが一緒に遊ぶ相手に伝わるでしょうか? それは他のプレイヤーにとって魅力的でしょうか?

ドラえもんに登場するジャイアンが、下手な歌を無理やり聞かせる場面をジャイアンリサイタルと呼びます。

自分だけが楽しい長々とした設定や背景説明は、他のプレイヤーにとっては「聞きたくもないノイズ」になってしまう可能性があるのです。しかし、それは「どうでもいい人」の設定であればです。
そう。ちゃんとその人やキャラクターに魅力があって、背景を知ることで物語に深みが生まれるような魅力さえあればいいんです。
つまりジャイアンが悪いのはリサイタルを開催していることではなく、そのリサイタルが下手くそな歌で聞くに耐えない迷惑行為だからということです。身も蓋もない話ですが、歌が上手くてみんなが魅力的に感じていればそれでいいんです。

キャラ設定をシナリオの流れと噛み合わせたり、同卓PCの設定を取り込んでチューニングしたり、キャラの隠されていた部分が見える度に「そうだったんだーうわー」と歓声があがるような魅力的な設定を用意できれば良い……というわけではないんですねー。

そこに追加で「ちゃんと伝わるように表現できればよい」のです。魅力的な設定でも伝わらなくちゃ意味はありません。必要なのはコミュニケーション能力です。ちゃんと相手に魅力的に伝わるような話し方、タイミングの選び方などが必要ということです。

ね、めっちゃハードル高いでしょ? とはいえ実際にはここまでの高いハードルは感じることなく「なんとなーく」で楽しめてる人が多いです。それは相手が「気の置ける仲の友人知人だから」なんですねー。ある程度のミスマッチを許容できるくらいの関係性があるから許されているんです。

逆にいえば、そうじゃない場合は要注意です。友達の友達、野良マッチング、などそういった関係性の薄い人との卓は要注意なんです。

常に「相手を楽しませているか」「相手を不快にしていないか」を意識するだけでも、セッションの質は大きく変わります。まあ、自分が精一杯気を使ってやった行為が相手にとって地雷だっていうなら、それはもう根本的に相性が悪いから仕方がないのですが。

PvPは何よりも協力が必要なゲームだ

PvP要素ありのシナリオ、対立型のシナリオ、そのようなシナリオは多々あります。中には苦手意識を持っていて、対立は遊びたくないって方もいらっしゃることでしょう。その気持ちも分かります。特にシノビガミでは結構不愉快な経験をした方も多いのではないでしょうか。

これは何故こんなことになってしまったのか。もう今までの話で散々語っていますが、コミュニケーションが出来ていないからであり、尚且つ対立型とは「最も高いコミュニケーション能力を必要とするハードルの高い遊びだから」です。

ちゃんと理解している人は問題ないのですが、これを正しく理解していたとしても対立というのは高度なコミュニケーションを要します。何せ、勝ち負けという概念が存在してしまうということは、どちらかが勝者役、敗者役をやらないといけないんです。

これは本当に難しいんです。コミュニケーションとは互いのやりたいことを上手に引き出し合うと話しましたが、強い力で相手を圧倒してしまうと、相手のやりたいことが何もできなくなってしまいます。断ちクリ一撃で構成崩壊、何もできずに敗北。それは楽しくないでしょう。

  • 強すぎるキャラや戦術で相手を圧倒すると、相手のプレイヤーは何もできなくなり楽しめない
  • かといって明らかに手加減すると、相手に「舐めプされている」と感じさせてしまう
  • 勝敗だけでなく、そこに至るまでのドラマや接戦感を共に楽しむバランス感覚が必要

ね、めちゃくちゃ難しいでしょ。そしてそもそも「対立型をみんなで協力して作る遊びである」という大前提を理解していても大変なのに、理解していない人がいると地獄絵図と化すんですよ。

感覚的にはパーティゲーム。マリオカートは「コミュニケーションのツール」のようなコンセプトがあるようですが、TRPGもそういうコンテンツなんですです。ゲームとしての勝ち負けよりも、その過程で生まれる感情やドラマを楽しむことが本質なのです。

対立型が苦手な方は、まずは信頼関係のあるメンバーと少しずつ試してみることをお勧めします。野良では絶対に対立にはいくな! ちなみに私が書いたシナリオに対立型は殆ど存在しないんですけどね!

まとめ

TRPGはコミュニケーションだって分かっている方はいいんですけど、本質が違う箇所にあると考えている方は一旦思考を整理する良い機会になれば幸いです。

  • 自分の楽しさだけでなく、テーブルの全員が楽しめるよう心がける
  • 相手の想像を理解し、自分の想像を伝える技術を磨く
  • キャラクター設定は魅力的に、そして適切に伝える
  • 対立型シナリオでは特に高度なコミュニケーションを心がける

TRPGを始めたばかりの方は、いきなり高度なテクニックを身につける必要はありません。まずは信頼できる仲間と「お互いの想像を楽しむ」という基本を大切にしながら、少しずつスキルを磨いていきましょう。

まあ、こんな偉そうなこと言ってる私も実際大したプレイができているわけじゃないのに理論でイキってるだけなので、「ふーん」って気楽にとらえつつ、でもどこかのタイミングで「あーなんかあんなこと言っとった変なやつおったわー」って思い出していただければそれでいいかなーって。