TRPGシナリオ制作講座一話 ~楽しい非日常体験~

コラム

こんにちは、ふれのと申します。

これまでシノビガミを中心とした様々なシナリオを書いて参りまして「楽しいシナリオだった」という嬉しいお言葉をいただくこともあります。

そんな中で「どうやったらシナリオが書けるの?」というお声をいただくことも多々ございまして、この場で解説することで誰かのシナリオ制作の助けになったり、自分自身の思考整理ができたらいいなあと思い、この記事を書いています。

結論を先に話すとふれシはものすごく理論的に作られています

私は結構感覚派の人間でして、普段の日常生活から後先考えずに行動したり、その場の感情で物事を判断することが良くあります。先ほどの理論的という言葉から最も程遠い人間ですね。

しかし、だからこそ自分の行動に対しての物差しを用意するようにしていて、TRPGのシナリオにおいては「シナリオ要素のパーツ分け、役割整理」を必ず行うようにしています。

TRPGは楽しい非日常体験だ

今回は基礎中の基礎である。人々はTRPGを何故遊ぶのかという根幹的なお話にフォーカスします。

昨今では様々なコンテンツに満ちています。アニメやコンシューマーゲーム、漫画や映画、そんな中でTRPGを遊ぶのは何故なのでしょう? 他では味わえないあの体験はどこからもたらされるものなのでしょうか?

これをふれのはTRPGでは「楽しい非日常体験」を得られるからと結論付けています。

例えば、TRPGにおいてリアルの自分とまったく変わらない性格や個性をもったキャラクターとして「ふれの君」が居たとします。要は自分自身の分身をRPすると考えてください。
そんなふれの君がリアルでやっているありふれた行動である「マクドナルドでの食事シーン」というRPをしても楽しくありません。そんな面白くないゲーム遊ぶくらいならリアルでマクドへ行ってご飯食べます。

日常生活には存在しない特別な体験、その非日常こそがTRPGの醍醐味です。今回はそれを更に二つに分割して深く掘り下げていきましょう。

非日常的なキャラクター

さて、非日常的な体験を得るための大事な材料が「キャラクター」です。

例えば、先程のマクドナルドへ行くというRPには魅力を感じなかったと思いますが、そこにいく「ふれの君」を非日常的なキャラクターに置き換えてみましょう。

実は自分とは全く異なる性格や特性のキャラクターがマクドナルドに行くRPを行うと、先程まで何の面白みもなかった場面が一変して面白くなるんです。

例えばお金持ちの高校生お嬢様がマクドナルドへ行くと想定します。もう少しキャラクターを煮詰めてみましょう。
普段は言いつけが厳しい執事が常に傍にいるのですが今日はたまたま一人のようです。普段なら学校帰りの寄り道など許されるはずもありませんが、今日だけは自分の自由ということで興味があったマクドナルドへ入店しました。

さて、彼女はどのような反応を示すのでしょう? どのような言葉を紡ぐのでしょう? 想像するだけで面白いですよね。

これを「非日常的なキャラクター」と呼んでいます。キャラクターをリアルの自分とは異なるキャラクターにしてみるとより非日常的な体験に浸かることができます。キャラクターには更に二つの要素があります。

性格付けによるアプローチ

キャラクターの性格を考えてみましょう。以下のものはあくまでも一例です。

・真面目 ・不真面目 
・熱血 ・クール
・強気 ・弱気
・楽天 ・悲観
・温和 ・粗暴
・優しい ・冷徹
・合理的 ・感情的
・活発系 ・おとなしい系
・常識的 ・非常識
・支配的 ・従属的

複数を組み合わせても構いませんので、リアルの自分とは少し違った性格を考えてみましょう

属性によるアプローチ

キャラクターに付与される特別な属性を考えてみます。様々な手法がありますが、一番代表的なものは職業です。他にも非日常ならではの現実離れした属性や、上記の性格を追加補強するような属性を追加しても構いません。

職業属性例
・お嬢様 ・不良生徒
・刑事 ・国会議員
・花屋 ・コック
・スポーツ選手 ・メカニック

現実離れした属性例
・吸血鬼 ・悪魔
・獣人 ・ロボット
・悪の科学者 ・正義のヒーロー

性格補強の属性例
・ツンデレ ・病弱
・成績優秀 ・毒舌家
・策士 ・守銭奴
・ナンパ系 ・純情
・ツッコミ系 ・ボケ系

あくまでも例に過ぎませんが、こういった要素を組み合わせてキャラクターの属性を付与していきます。

非日常的な体験

再び最初の話に戻りますが、「ふれの君」が「マクドナルドへいく話」は面白くないという結論でした。そこでキャラクターを変えることで非日常的な体験を得ようとしましたが、変更できる箇所はもう一箇所あります。マクドナルドのくだりの方です。マクドナルドに固執する必要などどこにもないのです。

例え、キャラクターがリアルの自分と変わらない「ふれの君」であったとしても、何かの事件に巻き込まれてしまうような場面、行ったことのない国、何なら異世界へ旅立つような状況に置かれたと仮定します。これもまた面白いんです。

これを「非日常的なシチュエーション」による楽しさと定義しています。そしてどちらかといえば昨今のTRPGにおいてはこのシチュエーションが重視される傾向にあります。

シチュエーション例
・古代の秘宝を求めて遺跡に潜入する
・学校に乗り込んできた敵から生徒を守るため戦う
・夏休みにクラスの同級生からリゾート施設へ誘われる
・摩天楼の屋上を駆けながら、忍者同士が空中戦を繰り広げる
・地球に衝突してしまう彗星を破壊するために宇宙空間を目指す
・人の心を理解するアンドロイドと出会い交流する
・殺人事件の犯人を追い詰め確保しようと突入する

このようなシチュエーションを組み合わせることでTRPGのストーリーを作っていきます。その目的は非日常的な体験を実現するためにあります。

キャラクターとシチュエーションの組み合わせ

すべてのTRPGのシナリオは、先程分解して説明した非日常的な「キャラクター」と「シチュエーション」の組み合わせで構成されています。

ちなみにこれはどちらか一方だけでも成立します。キャラクターの性格や属性は拘って、シチュエーションは日常的にありふれた場面を再現するシナリオというのは結構ありますし、楽しんでいるからは多いです。

いわゆるうちよそ系のシナリオなどで見られますが、その場合はキャラクターをしっかり作っておかないと先程の「ふれの君」が「マクドナルドへ行く」のような退屈なシナリオになってしまう可能性があります。

さて「キャラクター」と「シチュエーション」を組み合わせる具体的なシナリオ制作方法について話しましょう。

キャラクターはハンドアウト6割、プレイヤー4割で決める

「キャラクター」に関する要素はハンドアウト(使命と秘密)に納めると上手くいきます。どのような職業なのか、どのような立ち位置なのか、どのような性格なのか、それをシナリオ側からハンドアウトとして提示しておくとプレイヤー側がそのキャラクターを用意しやすくなります。

ここで二つ注意したいことがあります。性格から属性、1から100まですべてのキャラクター要素を作者であるあなたは想定し考えておくこと、そして考えたその要素は全て使わずに6割だけシナリオ側で提示することです。

例えば、アンドロイドと人との交流を描くシナリオが書きたいとします。プレイヤーにはそのアンドロイドと人をそれぞれRPしてもらうというわけです。
まずはアンドロイドと人のキャラクターを作り込みましょう。上記の性格や属性を参考に細かい設定まで考え、年齢、性別、職業、細かい性格、1~100まで作り込みます。私はこの作者が作り込んだキャラクターを「ペルソナ」と呼んでいます。

作り込んだら今度はそのペルソナたちがシナリオを遊んだと仮定し、シミュレーションしてみます。物語はうまく動くでしょうか? そのペルソナはシナリオを楽しむことができたでしょうか? それが上手くいったならそのシナリオは楽しくなる可能性を秘めています。やりました!!

ですが、そのままではシナリオになりません。そのペルソナをそのままプレイヤーに渡して「この通りのキャラクターを作ってください」というのはプレイヤーの自由を奪ってしまうことになります。

今度はそのペルソナから要素を削っていきます。一度シミュレーションしているなら、どのキャラクター要素が必須項目でどのキャラクター要素が無くても困らないかは判断できるはずです。

例えば「アンドロイドは人を守りたいと考えている。何故ならその人(女の子)に恋愛感情を抱いてしまったからだ」というペルソナだったとき。後半の部分は丸々削ってしまっても良いかもしれません。

人を守りたいというアンドロイドの根幹は守りつつ、その行動指針をプレイヤー任せにしてしまうというやり方です。もし恋愛要素を絡ませることがシナリオ上重要なのであれば、そこは削ってはいけません。どこを優先し、どこを削るかは作者であるあなた次第です。

①.理想のキャラクターであるペルソナを作成する
②.そのペルソナでストーリーをシュミレーションする
③.ペルソナから要素を削ってプレイヤーが遊ぶハンドアウトにする

シチュエーションの作り方

シチュエーションの作り方ですが、これを細かく語ってしまうとそれだけで1記事できてしまうので、ここでは書きたいストーリーや展開がある程度決まっている前提で説明します。

自分が書きたい物語やシチュエーションを1本の長い流れにします。小説のようなイメージです。

出来上がったら今度はそれを分割してしていき、そのパーツをシナリオの各地に散りばめていきます。ハンドアウトや各イベントシーン内にて順々にそのストーリーを公開していき、すべてのシーンが開かれたときに物語の全容を理解できるというやり方です。

①.一本の長いストーリーを作る
②.そのストーリーを分解し、シナリオの各所に散りばめていく

まとめ

・非日常体験を用意するためには「キャラクター」と「シチュエーション」が必要
・性格と属性を作り込み「キャラクター」を作成
・非日常的な場面を考え「シチュエーション」を作成
・すべての要素を想定したキャラクター「ペルソナ」の作成
・ペルソナから要素を削減し、ハンドアウトを作成
・一本のストーリーを分解し、シナリオの各所に散りばめる

今回はTRPGを楽しむための根幹である非日常的な体験について深掘りしてみました。

TRPGの楽しさにおける根幹は、「キャラクター」と「シチュエーション」の2点をどちらも合わせ持った体験ができることによる掛け算の楽しさがあるのです。

ということは、シナリオ制作をする側としては「楽しい非日常体験」をシナリオ内で提供できると、必然的に良いセッションに繋がりやすいわけです。

当たり前のことを言っていますが、シナリオを作る上でのベースなので大切にしておきましょう。ここがブレるとシナリオ制作の指針がブレることになります。

これはすべてのシナリオに当てはめることができます。色んなシナリオで登場するキャラクターや、発生するシチュエーション、どこにシナリオ制作者がデザインした非日常体験が用意されているのか分析してみるのも面白いですよ。

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